「人生100年時代の稼ぎ方」レビュー~もしも100年生きなくても~

「人生100年時代の稼ぎ方」レビュー~もしも100年生きなくても~

小さな島の神様は忙しいらしい。

潮風の香りと背の高い木々に守られた神社の前で立ち尽くし、そんなことを思いながら案内板を眺めていた。

学業成就・子宝祈願・豊漁、そして健康長寿。

達筆で連ねられたご利益の数々に目が止まったとき、私は不思議な衝撃に包まれた。

自分でもなにが衝撃だったのか理解するのに少しの時間が必要だった。

その日、人生で初めて「夫と一緒に、できれば子供と共に、私は長く生きたい」と願ったのだった。


人生は100年も続く


今回この記事で紹介するのは、「人生100年時代の稼ぎ方」という、なんともビジネス書らしいタイトルの本である。

私が過ごした幼年期は、100年生きたら役所から表彰されてお祝い金が出るような時代だった。

双子で100歳を超えて生きた「きんさん・ぎんさん」は極めて貴重な存在だった。私自身の祖父母は80代で体を壊し、90代の半ばで亡くなった。祖父に至っては70代で「老衰」と表現された。

だから、君は高い確率で100年生きるんだよ、と言われるようになっても、まるで実感がないのだ。

というよりも、小さな神社で「長生きしたい」と願った自分に衝撃を受けた本当の理由は、人生の終わりがどれくらい遠くに(あるいは近くに)あるのか考えたことすらなかったからで、

つまり私にとって人生が有限で、70年ほど先まで続くのだ、というはっきりとしたイメージはあまりにも未知のものだったのだ。

だからこの本を手にとった。これから続く70年ほどの人生が不安だからでも、楽しみだからでもなく、まったく想像ができなかったからだ。

そしてこの「人生100年時代の稼ぎ方」は見事に応えてくれた。

「人生100年時代の稼ぎ方」が教えてくれたこと




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この本は、経済評論家 勝間和代氏、ウィリアムズ・リー・タグ代表 久保明彦氏、ビジネスコンサルタント 和田裕美氏の3人が行った講演会を元に読みやすく整えられた一冊である。

完結に内容を引用すると、


「コントロールができない不確かなものをよりどころにせず、
安定性よりも将来性が高い方へBETし続けることです」
経済評論家 勝間和代

「何でも屋のジェネラリストではなく、置き換えできないスペシャリストに。
人材価値は変わったのに“ゆでガエル"のままでは生き残れるわけがない」
ウィリアムズ・リー・タグ代表 久保明彦

「人は“買うモノ"を選ぶだけではなく、“モノを売っている人"を
選ぶもの。だからこそ、選ばれる条件を持っている人が
どんどん際立ってくる時代です」
ビジネスコンサルタント 和田裕美


というように、人生100年時代をひたすらに戦略的に切り込んだ内容になっている。

それぞれの章を読むと、人生100年時代はボンヤリとしていては決して生き残れないのだ、という強い焦燥感に駆られる。

我々が生きるのは、簡単な時代ではない。間違った努力は決して実らないし、手抜きの戦略では簡単に失敗してしまう。

そんな恐ろしいことが、わかりやすく読みやすく書き連ねられている。正直に言えばこんなに毎日毎日戦略的に100歳まで生きるなんてゴメンだ、なんて思った。

これまで漠然と捉えてきた常識は脆くも崩れ去り、健康のあり方もまるで違い、稼ぎ方も変わる。

でも、本当は、人生が100年続くせいで社会が激変していくから、ではないのだ。

100年生きるから、人生の捉え方を変えなければならないのではない。

実は、もう今この瞬間、社会はとっくに激変しているのだ。この本に書かれているのは未来のことではない。今なんだ。

社会は凄まじい勢いで変わっていく。それを嘆いても取り残されるだけだ。逃げることもできない。

そんなときに、この本が示してくれたのは「社会が激変する時代を生き抜くための基礎体力の付け方」なのだ。



100年も生きる。

それは良い知らせなのか、それとも呪縛なのか。

答えはきっと人生の終わりに分かる。それまでは、人生からこぼれ落ちないように生きていこう。

簡単には正解のわからない時代だけれど、賢人たちの知恵をたった1,458円で学べる時代でもあるから。

そんなことを思った一冊だった。




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